【第7回】ペーター•ダムの芸術 リヒャルト・シュトラウス 歌劇「無口な女」(ショートバージョン)

柴犬にとって梅雨は散歩に行けない日の多い試練の季節だが、空いた時間でせっせとこのブログを書きすすめる。いよいよ今回はリヒャルト・シュトラウスを取り上げる。「いよいよ」というのは、リヒャルト・シュトラウスはペーター・ダムにとって特別な作曲家だからだ。

なぜペーター・ダムはリヒャルト・シュトラウスが好きなのだろうか。単純に音楽そのものが好きだから?ペーター・ダムがシュトラウスゆかりのマイニンゲン出身であるから?マイニンゲンはシュトラウスが21歳の時に初めて赴任した街で、「ホルン協奏曲第1番」もここで初演されている。

手始めにあまり有名ではないかもしれないが、歌劇「無口な女」を紹介する。  

楽曲について

歌劇「無口な女」はナチス政権下の1935年に初演されたシュトラウス晩年の作品。

オペラは騒音を極度に嫌うイギリスの退役軍人を取り巻く全3幕の物語。「無口な」どころか、オペラはほとんどマシンガントークの連続。無口な登場人物は一人もいない。脚本はユダヤ人であるシュテファン・ツヴァイク。

初演時には関係者が(ナチスを忖度して)ツヴァイクの名前が公演ポスターから外されたことを知ったシュトラウスは、猛抗議して名前の掲載をことを承諾させた。この事件からシュトラウスの立場は暗転してくる。 

Kuuta
Kuuta

シュトラウスの後半生はもっと注目されるべきですね。

一緒にもっと勉強しましょう!

演奏者と録音について

指揮者: マレク・ヤノフスキ

オーケストラ:ドレスデン国立歌劇場

モロズス卿役:テオ・アダム

録音日時:1976年8月、1977年8月 (ペーター•ダム 39歳、40歳)

録音場所:ドレスデン ルカ教会 

指揮者のヤノフスキはポーランド出身の旧西ドイツの指揮者。1970年代にオペラ演奏のクオリティーを維持するためにドレスデンに招聘された。半世紀近く前に録音されたとは思えない、みずみずしい録音だ。 

「ペーター•ダム的」聴きどころ

ポプリ

第一幕の第一曲。「ポプリ」は小さな序曲のような意味。とても短いが、とても楽しい!

冒頭はペーター•ダムのイ長調の音階練習的なフレーズで始まる。このテーマはオペラに登場する床屋のテーマなのだが、まるでペーター•ダムが「さあ、楽しいオペラが始まるよ!」と合図をして、どんどん他の楽器が集まってくるフラッシュモブのような曲だ。楽しそうなペーター•ダムの演奏が印象的。 

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Kuuta
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楽しすぎる!

第2幕 第11場 

モロゾフが「無口で好ましい」と信じて結婚した若いアミンタが豹変したことに強いショックを受けて、甥のヘンリーに付き添われて自室に向かい「あかん、もう寝るわ。。」といって退場する。そして、そこからペーター•ダムの奇跡の美しいソロが始まる。

リヒャルト・シュトラウスがホルンのために書いた数々の美しい旋律のなかでも、最も美しいメロディーの一つではないだろうか。この美しく、しかも難易度の高いフレーズをペーター•ダムは心をこめてたっぷりと歌い上げている。ここは絶対に聞き逃したくない場面。 

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だただただ美しくて言葉になりません。。。

 

第3幕 最終曲 Wie schön ist doch die Musik

ペーター•ダムがソロを吹いたり、目立つ曲ではない。しかし、私個人(個犬?)が好きな曲として加えることをお許しいただきたい。

“Wie schön ist doch die Musik – aber wie schön erst, wenn sie vorbei ist “

(音楽ほど素晴らしいものはない。しかし、もっと美しいのはそれが通り過ぎていった時だ) と歌う場面。

ツヴァイクの脚本、シュトラウスのメロディー、テオ・アダムの歌声が見事に一つになった感動的な演奏。リヒャルト・シュトラウスの後半生を切り捨てるのは本当にもったいない。そして、ペーター・ダムの名演奏を忘れてしまうことはさらにもったいない。 

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Kuuta
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有名でなくてもこんなにも美しい曲があるんですね。

 

まだまだたくさんのダム味(み)があるのですね!