
柴犬にとって梅雨は散歩に行けない日の多い試練の季節。そんなときは、静かに音楽に耳を傾けながらブログを書き進めるに限ります。
さて、ペーター・ダムの芸術を追うシリーズ、いよいよ今回はリヒャルト・シュトラウスを取り上げます。「いよいよ」と書いたのは、シュトラウスこそがペーター・ダムにとって、そしてホルン奏者にとって特別な作曲家だからです。
今回ご紹介するのは、少しマニアックかもしれませんが、知れば知るほど味わい深い歌劇『無口な女』です。
なぜペーター・ダムはシュトラウスが好きなのか?
単純に音楽そのものが素晴らしいから? もちろんそれもあります。しかし、そこには「マイニンゲン」という土地の縁があります。 マイニンゲンは、ダムの出身地であり、若きシュトラウスが21歳で初めて赴任し『ホルン協奏曲第1番』を初演した場所でもあります。ダムのホルンには、同郷の先人への敬意と、土地の空気が込められているのかもしれません。
「無口な女」のあらすじと歴史的背景
歌劇「無口な女」はナチス政権下の1935年に初演されたシュトラウス晩年の作品。
オペラは騒音を極度に嫌うイギリスの退役軍人を取り巻く全3幕の物語。「無口な」どころか、オペラはほとんどマシンガントークの連続。無口な登場人物は一人もいない。脚本はユダヤ人であるシュテファン・ツヴァイク。
初演時には関係者が(ナチスを忖度して)ツヴァイクの名前が公演ポスターから外されたことを知ったシュトラウスは、猛抗議して名前の掲載をことを承諾させた。この事件からシュトラウスの立場は暗転してくる。

シュトラウスの後半生はもっと注目されるべきですね。

一緒にもっと勉強しましょう!
ヤノフスキ指揮 ドレスデン国立歌劇場
ヤノフスキ指揮 ドレスデン国立歌劇場指揮者: マレク・ヤノフスキ
オーケストラ:ドレスデン国立歌劇場
モロズス卿役:テオ・アダム
録音日時:1976年8月、1977年8月 (ペーター•ダム 39歳、40歳)
録音場所:ドレスデン ルカ教会
指揮者のヤノフスキはポーランド出身の旧西ドイツの指揮者。1970年代にオペラ演奏のクオリティーを維持するためにドレスデンに招聘された。半世紀近く前に録音されたとは思えない、みずみずしい録音だ。
「ペーター•ダム的」聴きどころ
冒頭に注目!「ポプリ」
第一幕の第一曲。「ポプリ」は小さな序曲のような意味。とても短いが、とても楽しい!
冒頭はペーター•ダムのイ長調の音階練習的なフレーズで始まる。このテーマはオペラに登場する床屋のテーマなのだが、まるでペーター•ダムが「さあ、楽しいオペラが始まるよ!」と合図をして、どんどん他の楽器が集まってくるフラッシュモブのような曲だ。楽しそうなペーター•ダムの演奏が印象的。


楽しすぎる!
絶対に聞き逃したくない!第2幕 第11場
モロゾフが「無口で好ましい」と信じて結婚した若いアミンタが豹変したことに強いショックを受けて、甥のヘンリーに付き添われて自室に向かい「あかん、もう寝るわ。。」といって退場する。そして、そこからペーター•ダムの奇跡の美しいソロが始まる。
リヒャルト・シュトラウスがホルンのために書いた数々の美しい旋律のなかでも、最も美しいメロディーの一つではないだろうか。この美しく、しかも難易度の高いフレーズをペーター•ダムは心をこめてたっぷりと歌い上げている。ここは絶対に聞き逃したくない場面。
https://youtu.be/NvVL5A8njNQ?t=240

ただただ、美しくて言葉になりません。。。
第3幕 最終曲 Wie schön ist doch die Musik
ペーター•ダムがソロを吹いたり、目立つ曲ではない。しかし、私個人(個犬?)が好きな曲として加えることをお許しいただきたい。
“Wie schön ist doch die Musik – aber wie schön erst, wenn sie vorbei ist “
(音楽ほど素晴らしいものはない。しかし、もっと美しいのはそれが通り過ぎていった時だ) と歌う場面。
ツヴァイクの脚本、シュトラウスのメロディー、テオ・アダムの歌声が見事に一つになった感動的な演奏。リヒャルト・シュトラウスの後半生を切り捨てるのは本当にもったいない。そして、ペーター・ダムの名演奏を忘れてしまうことはさらにもったいない。


有名でなくてもこんなにも美しい曲があるんですね。

まだまだたくさんのダム味(み)があるのですね!

