ある夜、飼い主であるご主人様がにこにこしながら帰宅した。なにやらとても良いことがあったらしい。柴犬の聴力を駆使して2階でなされている会話を聞くと。。。
「ついに『ダム道』の兄弟子と知り合いになれたよ!」と興奮気味だ。「ダム道」ってなんだ、と思いながら続きを聞く。どうやらご主人様の大学オケの友人の紹介で、ペーター•ダムを敬愛するK氏を紹介してもらえて大変ご満悦らしい。K氏はペーター•ダムの現役時代の演奏を数多く実際に聴かれただけでなく、ドレスデンのペーター•ダム氏に4回も会いに行き、メールでの文通も数多くされているそうだ。上には上がいる。ご主人様に勝手に兄弟子呼ばわりされてK氏は至極ご迷惑だろうが、今回はそのK氏が愛聴するダムの名演奏、ブラームスの「ピアノ協奏曲第2番」を紹介したい。
楽曲について
これはブラームスが1878年、40代半ばで創作意欲も盛んだった時期の作品。その約20年前に発表した「ピアノ協奏曲第1番」が酷評されたため、今度こそ、と気合をいれて作曲した大作。第2楽章にスケルツォが入った全4楽章という、協奏曲にしては珍しい構成。今回は自分自身でも満足のいく仕上がりだったためか、自分の音楽教師であるエドゥアルト・マルクスゼンに献呈している。
ブラームス的にはリベンジを狙ったんでしょうか?
恩師に献呈なんて、それだけこの作品の出来に納得していたんでしょうね。
演奏者と録音について
指揮者:オイゲン・ヨッフム
ピアノ:ミシェル・ベロフ
オーケストラ:ドレスデン国立歌劇場
録音日時:1979年5月29日 (ペーター•ダム 42歳)
録音場所:Kulturpalast Dresden Konzertmitschnitt
レーベル:Weiblick SSS0085/86-2
「Weitblick」というレーベルは聴き慣れないが、昔の放送用音源をCD化しているドイツのレーベルだそうだ。この録音もライブ録音。楽章の合間の客のざわめきや、第3楽章でクラリネットのリードがおかしくなって音程がぶら下がった直後の厳しい客の咳払いなども聞こえる。💦
「ペーター•ダム的」聴きどころ
第一楽章 冒頭
CDに付いている、慶應義塾大学の許光俊教授の解説がユニークなので、そのまま引用する。
柴犬にとって人間は人智(犬智?)を超えた偉大な存在なのだが、その人間をして「神」と呼ばせしめる存在、ペーター•ダム。恐るべし。ご主人が「ダム道の兄弟子」というK氏が「この冒頭はたまらない」と愛聴される理由がよくわかる。冒頭だけでなく、再現部でももう一度現れるのが嬉しい。
第3楽章中間部(55小節目)
第3楽章といえばほぼチェロ協奏曲。ホルンの出番はほとんどない。それだけに55小節目でバイオリンが短調で主題を演奏する際にp(ピアノ)で被せるBフラットの伸ばしは大切だ。このなんでもない白い音符を感極まったペーター•ダムはそっとビブラートで歌っている。全身音楽のかたまりなので、ただの伸ばしでも音楽が溢れてくる。ここはあまり気づかれないかもしれないが、気をつけて聴きたい。
この第3楽章を聴くと、人間が音楽に一生を捧げる気持ちが柴犬にもわかる気がする。
ペーター•ダムの音だけでなく、全楽章をゆったりと聴いてほしい、名曲中の名曲。
冒頭のソロに涙が止まりません!😭
冒頭から「ダム味(み)」を味わえる、とっても素敵な一枚です!