【第9回】ペーター•ダムの芸術 ブラームス「交響曲第二番 ニ長調作品73」


 

例年より早く夏が来た。柴犬には梅雨に続いて試練の季節だ。熱中症予防のために、熱い音楽で身体を暑さに慣らさなくては。「暑熱順化」だ。真夏にカレー的な発想。そうなるとブラームスしかない。

とはいうものの、熱すぎる曲ではさすがに身がもたないので、熱くてもさっぱりしつつ、かつ「ダム味(み)」がたっぷり味わえるザンデルリンク指揮、ブラームス「交響曲第二番 ニ長調作品73」を取り上げる。

 

楽曲について

ヨハネス・ブラームス(1833-1897)が1877年に作曲した二つ目の交響曲。この前に作曲した「交響曲第一番」は、ご本人いわく「愛すべき音楽ではない」そうだ。嬉々として吹いている世の中のホルン吹きに対してなんと罰当たりな!と思うが、作曲者本人の評価に文句はいえない。おそらくハッスルし過ぎて空回りしたのかもしれない。このブログの第7回のようだ。

「第二番」はオーストリアの南、ウィーンとヴェネツィアの中間あたりの風光明媚なペルチャッハという街に滞在して作曲された。今度は自分の好きなようにのびのびと作曲したのだろう。

ところで、ブラームスがジャケットにもあるトレードマークの髭をつけるようになったのは45歳頃らしい。ということは、「第二番」はまだ髭がない時期の曲だろうか?スッキリしているのは髭がないからかもしれない。

Kuuta
Kuuta

僕は顔中毛だらけですが、いつもスッキリしてますよ。

ブラームスと比べないでください。💦

演奏者と録音について

指揮者: クルト・ザンデルリンク

オーケストラ:シュターツカペレ・ドレスデン

録音技師:クラウス・シュトリューベン

録音日時:1971年(ペーター•ダム 34歳)

録音場所:ドレスデン ルカ教会 

クルト・ザンデルリンク(1912-2011)はずっとソビエトの指揮者だと思っていた。調べてみたら、そう誤解して仕方ない複雑な事情がある。現在のポーランドで、かつてドイツの一部で、ソビエトとの領土争いに翻弄された地域の出身。親がユダヤ人であることからドイツ国籍を剥奪され、その結果1936年にソビエトに亡命。その後1960年に要請されて東ドイツに帰国する。1964年から1967年まで、前任のオトマール・スウィトナーの後を継いでシュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者を務める。まさに激動の人生だ。 

彼の写真をみると、欧州の街角のカフェで見かける、苦しい時代を生き抜いた老人特有の柔和な表情が印象的だ。この人の演奏をもっとたくさん聴いてみたいと思う。

日本が東ドイツと国交を樹立したのは1973年。このレコードは同じ頃に日本で発売されたので、今では「ドレスデン」が一般的な地名表記が「ドレースデン」になっているのがおもしろい。 

 

Kuuta
Kuuta

とっても味のあるいい演奏なんですよ。

苦労した人だけが紡ぎ出せる音楽ですね。

「ペーター•ダム的」聴きどころ

第一楽章冒頭

ご主人様は4曲あるブラームスの交響曲では「第二番」が一番好きだといっている。理由は単純で「開始3拍でホルンソロ」だからだそうだ。「ホルンしかお聴きにならないのですかっ!」とつっこみたくなるが、最近暑さで疲れがたまっているようなのでだまっておこう。私もご主人も、ザンデルリンク指揮のブラームス交響曲集では「第四番」は聴かない。「第四番」だけペーター•ダムが吹いていないからだ。「ダム味(み)」有り無しを比較するには絶好の題材かもしれない。

シュターツカペレ入団後2年目のペーター•ダムは早速「ダム味(み)」を炸裂させている。ザンデルリンク指揮の「交響曲第一番」では、2番ホルン以下がダムのテンションについていけていない痛々しい部分もあるが、この「第二番」からはパート全体の「ダム化」が順調に進んでいるのがわかる。 

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第2楽章 中間部 

この第二楽章はブラームス自身が「自分が書いたメロディーの中で一番好き!」と言ったそうだ。凡犬がブラームスのツボを推しはかることは難しいが、そう本人が思うのなら尊重してあげたい。ブラームス最高のメロディーかどうかは別として、この中間部のホルンソロはペーター•ダム名演の頂点の一つであることは間違いない。ブラームスの交響曲が「ペーター•ダム独奏会」になってしまう名場面。確かに、2番の2楽章はいいかも。。

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Kuuta
Kuuta

今回は名演中の名演を紹介しちゃいましたね。

今回もたっぷり「ダム味(み)」をごちそうさまでした!

おまけ:

ご主人様の兄弟子であるK氏から、「1978年にブロムシュテットとシュターツカペレ・ドレスデンが来日したときのライブ演奏がYoutubeにある」との情報をいただいたので下記に貼り付ける。指揮者は違うが、曲は同じブラームス「第二番」。ライブとは思えないペーター•ダムの素晴らしい演奏が聴ける。中プロでリヒャルト・シュトラウスのホルン協奏曲を吹いた後の演奏だそうだ。スタミナも神レベル!やはり夏バテにはペーター•ダムだ。  

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参考文献:

カラー版作曲家の生涯「ブラームス」 三宅幸夫著 新潮文庫