このシリーズも第4回となった。僕の飼い主であるご主人様は、あれこれ手を出しては三日坊主で終わり、いつも長女から馬鹿にされてはいじけている。飼い犬の僕も多分に飼い主の影響を受けているが、ペーター•ダムの名演紹介だけは三日坊主に終わらせたくない。ただ、重量級の名演紹介が続いたので、少しさっぱり系も必要だと思う。ベートーヴェンやマーラーがそれぞれの第4交響曲でさっぱり系を作りたくなった気持ちがよくわかる。
今回は趣向を変えて、ピアノ伴奏によるホルン独奏曲を集めた「ホルンとピアノのためのフランス音楽」というLPから、デュカス作曲「ヴィラネル」を紹介する。
楽曲について
「魔法使いの弟子」、「ラ・ペリ」は有名だろう。しかし、ホルンを吹く人間ならもう一曲あげられる。それが今回紹介する「ヴィラネル」だ。
デュカスは知名度のわりに知られている作品が少ない。理由を調べると、デュカスは自分にとても厳しく、納得のいく作品以外は全てみずから批判して廃棄したそうだ。その結果、残っている曲はわずか20曲ほど。もったいないような、もったいなくないような。。。いずれにしても、「ヴィラネル」はパリ音楽院の課題曲として作曲され、貴重な20数曲中の1曲として残された。
入試の課題曲だなんて、受験生にまで厳しかったのですね。こわっ!
Kuutaくんのご主人だったら一発不合格ですね💦
録音について
録音日時:「1985年に録音」のみの記載 (ペーター•ダム 48歳)
録音場所:ドレスデン、ルカ教会
録音技師:Horst Kunze
この年代になるとETERNAレーベルにも「Digital Metal Mastering (DMM)」というマークが誇らしげに付けられている。
「ペーター•ダム的」聴きどころ
ペーター•ダムというと、東独のガチガチの正統ドイツ音楽の体現者、というイメージがあるかもしれない。しかし、このLP「ホルンとピアノのためのフランス音楽」では、ジャズサキソフォーン奏者のような、軽快で洒脱なペーター•ダムを堪能できる。神様なので作品に合わせて演奏スタイルを自在に変えられるのだろう。
ピアノの短い前奏に続いて始まるホルン信号。それに続く、郷愁を誘う甘いメロディー、そして急に速度を上げたピアノがスリリングな中間部のアレグロの始まりを告げる。。
この素晴らしいピアノを弾いているのは名手Peter Röselだ。(ペーター・シュライヤーに続いてやはり「ペーター」だ。神様は自分と同じ名前の奏者がお好みなのだろうか。ペーター率が妙に高い。)
大抵のヴィラネルの演奏は、このアレグロのピアノの始まりで緊張感が途切れて失速してしまう。しかし、この演奏はすごい。さすが伝説の名ピアニストだけある。
ペーター•ダムはその神がかったピアノに(神様なので)絶妙な掛け合いをしている。ここは聴きどころだ。曲はどんどん速度を上げていき、フィナーレでは非常に早い三連符のフレーズを経て、High Fを叩いて終わる。この綺麗なペーター•ダムの三連符がまたとてもいい。
このCDは一家に一枚は欲しいですね。
一枚で「ダム味(み)」がたっぷりですね!
おまけ
今回の投稿を書く前に調べ物をしてた際、ご主人様が中学生の頃にNHKで放送されたペーター•ダムのリサイタルをYoutubeにアップしている動画を見つけた。ご主人様も同じようにVHSビデオに録画したが、もうどこかへ行ってしまったそうだ。メインのブラームスはテープの劣化でペーター•ダムのビブラート以上にプルプルしているが、今回紹介の「ヴィラネル」までは比較的しっかりしている。口笛を吹くようにこの曲を吹き通すペーター•ダムの姿は圧巻。その後のペーター•ダムへのインタビューでは神様の貴重な肉声が聴ける。