ご主人様には内緒でブログを書いているつもりが、しっかりバレていた。しかも、ご主人様が僕の代わりに第7回を執筆してくれた。お墨付きをいただいたので、もう何も恐れることはない。思う存分、「ペーター•ダム好き好き!」を咆哮しつづけよう。
ご主人様は、「僕が年初から悲しみにふせっている」、と書いていたが、本当はそうではない。ご主人様自身が、世界各地の戦争や元日に発生した能登半島地震、そして子どもの頃に強い影響を受けたヘルマン・バウマンや小澤征爾逝去のニュースを見て、悲しみに沈んでいるのだ。「飼い犬は飼い主に似る」というのは、顔つきや仕草だけでなく、心持ちを共有してしまうからだろう。僕もしばらく何もできずにいた。
でも、落ち込んでいるご主人様を見ているのは飼い犬としては辛い。ここはご主人様が大好きなペーター•ダムの名演で元気づけてあげよう!
喜ばせてあげるため、ご主人様のライブラリーにはない録音をインターネットで検索して、「これだ!」というものすごい録音を見つけた。それが今回紹介するウェーバー作曲、歌劇「オベロン」序曲だ。
演奏者と録音について
指揮者: ヘルベルト・ブロムシュテット Herbert Blomstedt
オーケストラ: シュターツカペレ・ドレスデン Staatskapelle Dresden
録音日時:1990年3月13日
録音場所: ジーゲン・ランドハレ Siegenlandhalle, Siegen (ライブ録音)
演奏を聴く前から泣いちゃいそうです。。
歴史的な名演奏にはそんな背景があったのですね!
「ペーター•ダム的」聴きどころ
「魔法の角笛」
「オベロン」序曲は冒頭、ホルンソロから始まる。オペラを観たことはないのだが、これは妖精の王、オベロンが吹く「魔法の角笛」だそうだ。このソロはいろいろな吹き方がある。真っ直ぐな音で、控えめに吹くのが多いのではないだろうか。ペーター•ダムは違う。旋律を歌として、たっぷりと歌っている。初めて世界最古のオーケストラの、本当のホルンの音色を聴いた西ドイツの聴衆が息をのむ音が聞こえてきそうだ。序奏が終わり、アレグロになると、カペレがここまで熱情的な演奏をするのか、と驚愕させられる。
ブロムシュテットとカペレの再会、分断された東西の人々の再会、いろいろな想いが重なり合い、演奏が終わった途端、聴衆は割れんばかりの拍手をペーター•ダムとカペレに送る音も録音されている。
政治的には西ドイツが東ドイツを吸収したのかもしれないが、音楽的にはペーター•ダムとドレスデン・シュターツカペレによってドイツは統一された、と考えるのは僕だけだろうか。。
東西の人々の心が一つになりました!
参考文献:エーバーハルト・シュタインドルフ著 『シュターツカペレ・ドレスデン 奏でられる楽団史』(識名 章喜訳、慶應義塾大学出版会)