うちのわんこ(空太)が、私のMacbookで何やらコソコソやっているのには気づいていたが、ひそかにブログを書いていることは、ペーター•ダム氏からのメールで初めて知った。
のぞいて見ると、私が心酔するペーター•ダム氏について書いている。わんこなだけに、「好き好き!」と咆哮しているだけの稚拙な文章だ。それでも、「犬は飼い主に似る」という言葉は本当らしい。私の言いたいことはちゃんと押さえている。
空太は、世界中で起きている残酷な戦争や、今年の1月1日に発生した能登半島地震のことを知り、悲しみにふせっている。比べてはならないが、かつてのホルンの巨星ヘルマン・バウマン、偉大な指揮者小澤征爾の逝去などの知らせが追い討ちをかけてしまい、しばらく執筆は難しい様子だ。それでも再開を希望する声が届いているので、今回は飼い主である私が、空太に代わって第7回を執筆する。
今回はマスネ作曲、「タイスの瞑想曲」を紹介したい。
演奏者と録音について
指揮者: シルヴィオ・ヴァルヴィーゾ Silvio Varviso
バイオリン:ペーター・ミリング Peter Mirring
オーケストラ: ドレスデン国立歌劇場管弦楽団 Staatskapelle Dresden
合唱:ドレスデンシュターツオーパー合唱団 Chors der Staatsoper Dresden
録音日時:1983年11月、12月
録音場所: ドレスデン
「ペーター•ダム的」聴きどころ
音楽の力
聴きどころを紹介する前に、今回は私が初めて執筆するので、少しだけ語るのをお許しいただきたい。
私は昔から音楽が好きで、音楽は人生に欠かせないものだと思ってきた。それでも、たった一度だけ音楽が自分の世界から完全に消え去ってしまったことがある。それは2011年の地震とそれに続く不安な日々だった。そんなある日、車のラジオで、ニュースの合間に何か音楽が流れたとき、「あ、音楽だ!」と気づき、張りつめた心がふっとゆるんだ経験がある。何の曲だったか覚えていない。軽音楽や歌謡曲だったかもしれない。それでも、音楽には本当に人を癒す力がある、と今振り返ると強く思う。
悲劇的な出来事が多いときには、悲劇的な曲は逆に重たすぎるかもしれない。むしろ、さりげなく、あっさりと終わってしまう「タイスの瞑想曲」を選ぶことにした。
Peter Mirringが艶やかで沁みるような音色でバイオリンを奏でている。
「この曲にホルンの聴かせどころなんて、あったっけ?」と思われる方が多いだろう。楽譜上はない。皆無だ。それでも私の敬愛するペーター•ダム氏は聴かせてくれる。バイオリンが最初のソロを弾き終わるとオーケストラの間奏がはいるが、そこで伴奏のロングトーンをしているペーター•ダムがしっかり歌い、あわや主役に躍り出るか、と思われる微笑ましい箇所がある。是非探し出して欲しい。
激しさも超絶技巧もない数小節だが、こんなところでも歌心が溢れてしまうペーター•ダム氏のホルンが好きでたまらない。
おっと、私も「好き好き」咆哮しているだけになってしまった。。次回からは再び空太に書いてもらおう。