柴犬にとって、散歩とお外での昼寝が気持ち良い秋がやってきた。柴犬とブラームスには秋が一番似合う。ご主人様は、「アバドとペーター•ダムの共演だ!」とか言いながら、嬉々として中古レコードを聴いている。今日は、今ご主人が聴いているレコードから、ペーター•ダムの名演奏を紹介する。
曲はブラームス「交響曲第3番」。有名なホルンソロといえば「第3楽章」。でも、今日は「第2楽章 Andante ハ長調」を取り上げる。皆さんは、金木犀の香りのように優しくて、さりげないこの「第2楽章」を、すぐに口ずさめるだろうか。
演奏者と録音について
指揮者: クラウディオ・アバド Claudio Abbado
オーケストラ: ドレスデン国立歌劇場管弦楽団 Staatskapelle Dresden
録音技師:Hans-Peter Schweigmann
録音日時:1972年6月(ペーター•ダム 34歳)
録音場所:ドレスデン ルカ教会 Lukas Kirche, Dresden
39歳の若きアバドは、ドレスデンシュターツカペレ(SKD)とブラームス「交響曲第3番」と「ハイドンの主題による変奏曲」を録音している。僕の知る限り、この一枚のみ。まさに一期一会だ。
アバドは若いといっても、すでにミラノスカラ座の音楽監督に就任するほどの実績を積んでいた時期。その若いイタリア人指揮者を、「鉄のカーテン」の向こうで迎えるドイツ最古のオーケストラ、SKD。その組み合わせを聞いただけで興味をそそられる。
こらこら!ボクシングじゃないんですから💦
「ペーター•ダム的」聴きどころ
この「交響曲第3番」は全部で4楽章構成。「第1楽章」中間部のソロ、「第3楽章」の有名なソロなど、「ダム味」を味わうには絶好の録音。それでも「ペーター•ダムらしさ」が滲み出る、「第2楽章」を紹介する。
第2楽章 Andante ハ長調
シューマンの「交響曲第3番 “ライン”」をほうふつとさせる「第1楽章」、哀愁漂う有名な「第3楽章」、エネルギッシュな「第4楽章」と比べると「第2楽章」はやや印象は薄いかもしれない。しかし、なかなか味わい深い曲だ。
「第2楽章」はクラリネットのソロが旋律を奏でる木管アンサンブルに始まり、弦楽器が優しく包み込むように進行する。ペーター•ダムのホルンは、他の木管楽器と区別がつかないような美しいビブラートをかけて、情感のこもったアンサンブルとソロを奏でる。
ペーター•ダムがどのように「第2楽章」を歌っているか、是非お聴きいただきたい。適当にビブラートをかけているのではなく、他の木管楽器とビブラートの波長をぴったり合わせている。そして彼のソロでしっとりまとめて、終曲部に至る部分は「第2楽章」のクライマックスだ。
僕はこの「第2楽章」は、初秋にぴったりな、隠れた名演だと思う。
アバドが世界的な指揮者になったきっかけはこの録音だったりして。
そうかもしれませんね。きっとそうですよ。